1)はじめに
「2024/08/16タメ村上流の氷河湖決壊洪水」について、10年ほど前のカトマンズ大学での講義時の学生で、現在はアラスカ大学にいると思われるAmrit Thapaさんからと、表雅英さんがRajuさんのヘリコプター動画を伝えてくれましたので、「緊急報告―2024/08/16タメ村上流の氷河湖決壊洪水―」(資料1)に続いてお知らせします。
資料1
緊急報告―2024/08/16タメ村上流の氷河湖決壊洪水―
2)Amrit Thapaさんのレーダー衛星画像
Amrit Thapa
रडार भूउपग्रहको तस्वीरबाट थामे Glacial Lake कस्तो देखिन्छ र रडार इमेज किन महत्वपूर्ण छ ???
तलको तस्वीरमा थामे घटना अघि र पछि को रडार इमेज देखाइएको छ । सामान्यतया, इमेजको काले भागले पानीलाई देखाउँछ। ४ वटा लेकमध्ये एउटामा आएको परिवर्तन [ GLOF पछि को इमेजमा कम कालो भाग ]सजिलै देख्न सकिन्छ। लगातार बादल भइरहने ठाउँमा रडार इमेज धेरै उपयोगी हुनसक्छ, , किनभने रडारले बादलभित्र छिरेर पनि तस्वीर लिन सक्छ। भाग्यवश, हामीले Planet भूउपग्रहको एउटा केही कम बादल भएको तस्वीर भेट्यौं, नत्र केही समयको लागि यही रडार इमेजमा भर पर्नु पर्ने हुन्थ्यो।
ネパール語の翻訳
https://gemini.google.com/app/eff18a0768e13cad
日本語訳
「レーダー衛星画像から見たタムセ氷河湖はどのような様子か、そしてレーダー画像はなぜ重要なのか?」
「下の画像では、タムセ事件の前後でのレーダー画像が示されています。一般的に、画像の黒い部分は水を表します。4つの湖のうち、ある湖に発生した変化(GLOF後の画像では黒い部分が減少している)がはっきりと確認できます。常に雲に覆われているような場所では、レーダー画像は非常に有用です。なぜなら、レーダーは雲を透過して画像を取得できるからです。幸運なことに、私たちはPlanet衛星の雲が少ない画像を入手しましたが、そうでなければしばらくの間、このレーダー画像に頼らざるを得なかったでしょう。」
#SAR #MicrowaveRemoteSensing #Disaster #Sentinel1 #Monsoon #Himalaya
(氷河湖決壊洪水の影響で、左図(GLOF直前の2024/08/14撮影)の矢印の氷河湖が、右図(GLOF直後の2024/08/19撮影)では矢印の氷河湖の面積が半分以下に縮小しています。)
3)Rajuさんのヘリコプター動画
表雅英さんからが下記のようなメイルが来ました。
記
氷河湖決壊後のヘリ画像
Masahide Omote
伏見大兄
10月のトレッキング・ガイドをお願いしているRajuが動画をアップしていました。
人命被害は無くて良かったですが、失われた生活を取り戻すのは大変です。
表雅英
(Rajuさんのヘリコプター動画にはいくつかの氷河湖が写っており、小さな湖には「Thame Flood due to broken this Ice Lake.」の注記があり、この小さな氷河湖(右の写真)が決壊したようです。)
4)むすび
Amrit Thapaさんが述べているように「常に雲に覆われているような場所では、レーダー画像は非常に有用です」との指摘は、まさにその通りですが、氷河湖決壊洪水を引き起こした氷河湖を特定したら、次は現地調査が欲しいところです。また、Rajuさんのヘリコプター動画でも同様に、「Thame Flood due to broken this Ice Lake.」と指摘した氷河湖のフィールド・ワークを望みたいと思います。
ネパールで氷河湖決壊洪水を発生しているのは、クンブ地域の1977年のミンボー氷河湖、1985年のラグモチェ(ディグ)氷河湖、1998年のサバイ氷河湖、およびアンナプルナ地域の2003、05,09年のガプチェ氷河湖で、いずれも長さ1km以内、堰きとめているモレーンは小規模なものものです。そこで、氷河湖決壊洪水を引き起こしたクンブ地域の1977年のミンボー氷河湖の現地調査の結果(資料2)を報告します。
クンブ地域のアマダブラム峰の南面にあるミンボー谷(下左の写真)の氷河湖が決壊し、ドゥドゥ・コシ(川)のラスワ水文観測所の水位が1mほど上昇したことを示しています(下中の図)。氷河湖を堰きとめていたモレーンは化石氷体を含む、いわゆるIce–cored–moraineで、幅30mの末端モレーンが2か所で決壊し、放水で空になった氷河湖を測量した結果、氷河湖決壊洪水の水量は5×105m3と推定されました(下右の図)。ミンボー谷の氷河湖決壊洪水の原因はモレーン中の化石氷体が融解し、氷河湖をせき止めていたモレーンが崩壊したことによると解釈できました。この氷河湖決壊洪水によるミンボー谷の土砂がイムジャ川を堰きとめたので、パンボチェ村周辺には一時的に湖が出現しました。
資料2
Nepal case study; Catastrophic floods (1985) Fushimi H., Ikegami K., Higuchi K. and Shankar k.,Techniques for prediction of runoff from glacierized areas, International Association of Hydrological Sciences, 149, 125-130.
5)追記
2024/08/24のLinkedInに前回報告で紹介したTenzing Chogyalさんが下記を投稿しています。
記
Tenzing Chogyal Sherpaさんがたった今シェアしました:
When the recent flood hit so close to home, sweeping away parts of the village where friends and relatives live, it wasn’t just a news story or a data point — it was a heartbreaking reality. The devastation caused by the outburst flood, triggered by cascading events across two lakes near Tashi Lapcha Pass, left us all in shock. Seeing the ancestral homes of Sherpa families in ruins was devastating, a sobering reminder of the fragility of life in the mountains.
What’s even more concerning is that neighboring valleys have either faced Glacial Lake Outburst Floods (GLOFs) like the Dig Tsho GLOF or are at risk of one. Thankfully, there were no casualties since the flood occurred midday, allowing many, including schoolchildren in hostels, to escape. The thought of such a disaster striking at night is chilling. This starkly highlights how vulnerable our mountain communities are and underscores that climate change impacts are not a distant concern—they are happening now, right in our backyard.
Despite these challenges, I remain hopeful. After the 2015 earthquake, Thame suffered extensive damage, but the community rebuilt stronger and better. I believe Thame will rise again, restored to its former glory and even stronger than before. Every disaster tests our resilience, but it also strengthens it. WE, THE MOUNTAIN COMMUNITY will emerge united, determined to protect our homes and way of life.
Now, more than ever, it’s crucial for us to raise our voices to the global community. Our resilience and recovery must serve as a powerful call to action. The time for meaningful change is now—our stories and struggles need to be heard and acted upon.
日本語翻訳
https://gemini.google.com/app/eff18a0768e13cad
「最近の洪水が地元に非常に近いところで発生し、友人や親戚が住む村の一部をのみ込んでしまったとき、それは単なるニュース記事やデータポイントではなく、心を痛める現実でした。タシ・ラップチャ・パス近くの2つの湖で連鎖的なイベントによって引き起こされた氷河湖決壊洪水による破壊は、私たち全員に衝撃を与えました。シェルパ家族の祖先からの家々が廃墟になっているのを見るのは悲惨で、山の生活の脆さを思い知らされました。
さらに懸念すべきなのは、隣接する谷々も、ディグ・ツォ・GLOFのような氷河湖決壊洪水に直面しているか、そのリスクにさらされていることです。幸いなことに、洪水が昼間に発生したため、ホステルにいる小学生を含む多くの人々が避難することができ、犠牲者は出ませんでした。夜間にそのような災害が発生する可能性を考えると寒気がします。これは、私たちの山岳コミュニティがいかに脆弱であるかを明確に示し、気候変動の影響が遠い懸念ではなく、今まさに私たちの家のすぐ隣で起こっていることを強調しています。
これらの課題にもかかわらず、私は希望を持ち続けています。2015年の地震の後、タメは広範囲な被害を受けましたが、コミュニティはより強く、より良く再建されました。私は、タメが再び立ち上がり、以前の栄光を取り戻し、以前よりも強くなると信じています。すべての災害は私たちの回復力を試しますが、同時にそれを強化します。私たちは山岳コミュニティとして、団結し、私たちの家と生活様式を守る決意で立ち上がります。
今こそ、世界的なコミュニティに声を上げる時です。私たちの回復力と復興は、行動への強力な呼びかけとして役立たなければなりません。意味のある変化の時は今です。私たちの物語と苦闘は、聞かれ、行動に移される必要があります。」