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ネパール2014春調査報告9  IMM(国際山岳博物館)展示更新

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写真1 スモッグにかすむ朝日のマチャプチャリ峰

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写真2 ポカラ周辺の山火事
   6月からはじまる雨期を前にしてヒマラヤ上空の雲がふえてきました。山の姿は相変わらず霞んでいるというより、スモッグで良くは見えません(写真1)。スモッグはインドやバングラデッシュから来るのと、ネパールの自動車の排気や山火事の煙(写真2)で、上空3000mほどまではスモッグの層で覆われています。このように、ヒマラヤの空の状況は良くないのですが、一方地上では、美しいショウガの花が咲きはじめました(写真3)。地元の人は、ファンカ・フルと言います。ファンカは扇、フルは花です。良い香りのこの花を扇状にかざり、女性が髪の毛にかざすのです。ちょうど、日本女性のカンザシのようです。
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写真3 良い香りのするショウガの花

アンデスの山岳民族の展示も

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写真4 展示会場(パノラマ)

 さて、国際山岳博物館の展示更新(写真4)ですが、新しい展示がくわわりました。それは、前便でお伝えしたICIMODの会議(資料1)の参加者を通じて、アメリカ人の文化人類学者Dr. Johan Reinhardから次のようなメイルが来たことがきっかけでした。

While in the museum a few months ago, I noticed that the Andes range, which is the world’s longest mountain chain and has the highest mountains outside of Asia, was not represented. I have traveled throughout much of the Andes for over 30 years (and have climbed over a hundred peaks), and thus I have several thousand images that I would be happy to make available to the museum. Since I am an anthropologist, there are also many images of local inhabitants and their cultures.
(意訳:数ヶ月前に博物館に行きましたが、アジア以外で最長の山脈で、高山でもあるアンデスの展示がないことに気づきました。私は30年以上アンデスを旅行し(100以上の山頂に登り)、数千枚の写真がありますので、博物館で使ってもらえれば幸いです。私は文化人類学者ですので、住民や文化についてのたくさんの写真があります。)

そこで、「国際」と銘うっている山岳博物館としてはアンデス山脈を無視することはできませんので、Johan Reinhardさんの写真データベースの中からとりあえず10枚を選び、アンデスの展示を加えることにしました(写真5左)。

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写真5 新たなアンデス(左)とナムチェ・バザール(右)の展示

主な内容は、アンデスのインカの山岳民族は氷河の聖地への巡礼をするとともに、死後は高山の頂上付近に運ばれ、高山の低温条件下でミイラ化している実態をDr. Johan Reinhardが調査していることです。ヒマラヤとは大きく違う山岳民族の信仰と山地の環境とのかかわり方に見学者が関心をよせていました(写真6)。たしか、これらのいくつかの写真はナショナル・ジオグラフィック・マガジンで見たような記憶があります。

ただ、温暖化が進むとすると、融解・再凍結の上限高度が上昇し、従来の寒冷な高山環境が変化しますので、微生物などの高地への移動とともに、アンデス高地の貴重なミイラなどの遺体の分解が進み、保存状態が悪くなることが予想されます。このことは、1920年代のエベレスト隊で亡くなったマロリー氏やヒマラヤの他の遭難者の遺体の保存状況も今後は変化していく(資料2)ことを示しています。

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写真6 アンデスの展示に興味をしめす見学者

ナムチェ・バザールの1970年から現在への変化

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写真7 ナムチェ・バザールの展示を見る見学者

従来のほとんどの伝統的な家は新築し、3~4階建てのホテルとなりましたので、あたかもカトマンズの繁華街、ターメルのようなたたずまいになっている(写真5右)ことに、見学者たちも驚いていました(写真7)。しかし、ここにも問題があります。それはトイレで、たれ流しのため汚水が地下に浸透し、やがては町の下部にある飲料水源の湧水の汚染をひきおこすことが心配されます(資料3)。

資料3
http://glacierworld.weebly.com/4imja-glacier-lake.html

 

 

 


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写真8 マチャプチャリ研究の展示にふれる見学者

更新した従来の展示

 今回印刷をし直し、色落ちを防ぐとともに、手などでふれても(写真8)、画像に傷がつきにくいラミネートで加工した展示ポスターの内容は下記の通りです。

温暖化とGLOF
温暖化とGLOF(氷河湖決壊洪水)
なぜ、ネパールの大規模氷河湖は決壊しないのか
マディ川氷河湖洪水
2012年セティ川洪水

マチャプチャリ研究
大気汚染と視程(Air Pollution and Visibility)
雪型(Snow  Shape)
雲の形成(Cloud Formation)

エコツアー
ポカラのグランドキャニオン(Grand Canyon of Pokhara)
ダンプス(Dhampus)
ツラギ氷河湖(Tulagi Glacier Lake)
イムジャ氷河湖(Imja Glacier Lake)
ギャジョ氷河(Gyajo Glacier)
アンナプルナ・ベース・キャンプ(Annapurna Base Camp)
プーン・ヒル(Poon Hill)

グーグル衛星画像解析
カトマンズの住宅開発と地滑り(Housing Site and Landslide in Kathmandu)
世界のトップ(Top of the World)

最後に

Picture写真 9 国際山岳博物館を訪ねて来てくれたソナム・フティさんと友人たち

  うれしいことに、5月27日午後、シェルパ女性の氷河研究の学生、ソナム・フティさん(資料4)が友達とともに、ポカラ周辺の地質巡見の途中にもかかわらず、山岳博物館を訪ねてくれました(写真9)。彼女たちとはカトマンズ大学で会うことになっていましたが、聞いてみると、彼女たちの大学と帰国直前のぼくの予定がかみあわず、カトマンズで再会する折り合いがつきそうもないので、今日は彼女の方から山岳博物館によってくれ、今回最後の再会の機会を作ってくれました。彼女たちの指導教官である古い友人のリジャン・バクタ・カヤスタさん(資料4)にも是非再会したいと思っているところです。
資料4
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2014/05/2014.html