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2015年ネパール春調査(13)ランタン地域の雪崩災害等に関する情報交換の進展

はじめに

「2015年ネパール地震」の際に発生したネパール・ヒマラヤ中央部のランタン村およびその周辺の雪崩などの災害に関しては、まず、従来からランタン村の支援をしてきた貞兼グループが5月28日のヘリコプター調査にあたって、当初僕が参加を求められていましたが心臓病の治療中なので、友人であるカトマンズ大学助教授の氷河学者、リジャン・カヤスタさんを推薦したところ、貞兼さんとは旧知の間柄であることもあり、快く引き受けていただきました。また同様に、八木グループは6月1日にヘリコプター調査を行うに際し、上記と同様な申し出がありましたが、やはりリジャンさんが参加することになりました。結果として、リジャンさんのようなネパール人の氷河研究者が参加することが彼らの将来にとって重要な経験の蓄積になった、と思っています。また、5月28日の貞兼グループのヘリコプター調査にはリジャンさんとともに、彼の研究室の修士課程2年目の学生で、雪崩災害の直前に現地調査をしていたラケッシュ・カヤスタさんも参加しましたので、若き学生たちの将来の成長も楽しみです。
  まず、貞兼グループの調査にあたっては、グループの中原一博さんとともに、ランタン村のペンバ・ニマ・ノルブ各氏が参加し、5月24日に貞兼さんの宿舎で事前の打ち合わせをしました(写真1)。僕らにとっても地元の方からの生々しい情報は大変貴重でしたし、彼らがりジャンさんの話に夢中になっていた(写真2)ところを見ると、彼らにとっても有意義であった、と思われます。彼らにとっては、新しい村の建設が当面の課題ですし、そのための場所の選定がヘリコプター調査に課せられていました。5月28日は天候にも恵まれ、雲ひとつない青空のもと、ヘリコプター調査が首尾よく実施されました(写真3、4)。
 また、八木グループの6月1日のヘリコプター調査にあたりまして、いくつかの動きがありましたので、メイル資料のうち個人的部分を省いた内容で、時間を追って、「ランタン地域の雪崩災害に関する情報交換」の場の成立過程を3日間のメイルの抜粋で紹介します。
はじめは、防災科学技術研究所の山口さんから、「情報共有」を求めるメイル1)がきました。そこで、僕から八木さんに「情報交換」を進めていく依頼のメイル2)を送りました。


1)山口 悟 2015/05/27
伏見先生
ご無沙汰しております防災科研の山口です。
このたびのネパールの地震に関しては、実際に現地で被災された際の状況も含め
て色々とメールで情報を頂いており、非常に助かっております。
さて、すでに貞兼さんから情報が伝わっているかと思いますが、今回のネパール
の地震災害に関して、科研費の突発災害が採択され、雪氷関係者はランタン谷の
災害に関して、ポストモンスーン期に実際に現場に入って調査をする計画を現在
進めています。
その過程で、同じ科研の突発災害のメンバーである八木先生が近々ネパール入り
して、ランタン谷から東の地域までを空撮される予定があることを知りました。
現在計画中の我々の現地調査のためにも、ぜひ情報共有をさせていただきたいの
ですが、残念ながら、私も含めて突発災害に参加している現在の雪氷メンバー
は、八木先生との付き合いがございません。
つきましては、八木先生をよく知っていらっしゃる伏見先生に、雪氷のメンバー
であります
上石 勲 (防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター センター長)
山口 悟 (防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 主任研究員)
を八木先生に紹介していただけないでしょうか?
ぜひ協力して調査・研究ができればと考えております。2)伏見 碩二 2015/05/27
八木さまーーーカトマンズ大学の伏見です。
出発前で大忙しのこととお察しいたします。
さて、本日友人の山口さんから下記のメイルが来ましたので、
転送致します。メイルのとおり、彼らはポストにランタン谷
の調査を「科研費の突発災害」で行う予定です。
つきましては、2015年ネパール地震関連の研究活動の一環
としまして、相互の情報交換を円滑に進めていくことが必要
になると考えています。現在カトマンズには1970年代から
ランタン村を支援してきている人たちも活動していますので、
その方々も含めて情報交換ができたらと思っています。
そのことについても、カトマンズに来られたら、相談させて
ください。
そこで、下記の友人たちを紹介させていただくとともに、
相互に連絡を取り合う中で、情報交換が円滑に進められる
ことを期待しております。

防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター
上石 勲
山口 悟
それでは、カトマンズでの再会を楽しみにしています。
以上、よろしくお願いいたします。ナマステ!

それに対して八木さんからは、情報交換を進めるとともに、ポストモンスーンにランタンの調査する旨のメイル3)がきました。

3)八木浩司 2015/05/28
伏見先生
八木です.
本日午前に幕張で開催中の日本惑星科学連合学会で上石先生にお会いしました.
今後連絡を取って参る所存です.
出来ればポストモンスーンにランタンの調査に行きたいと考えています.

そこで、八木さんからメイルがきた日に、貞兼グループがヘリコプター調査を実施し、貴重な資料を取得したことを八木さんにメイル4)で伝えました。

4)伏見 碩二 2015/05/28
八木さまーーーカトマンズの伏見です。
「ポストモンスーンにランタンの調査」を共同で行うことに賛成します。
実は、1970年代からランタン村の支援をされている貞兼綾子さんたちが
今朝ヘリコプターで現地調査をし、リジャンさんともども、貴重な資料を
取得してきました。
皆さんは明日5月29日にカトマンズに到着し、6月1日にヘリ調査をする
とリジャンさんから聞いていますので、できましたら、5月30日または
5月31日に関係者で情報交換をカトマンズで行いたいと思っています。
到着後、私の携帯9803655634まで電話してください。詳しくは、
その時相談させてください。よろしくお願いいたします。ナマステ!

ヘリコプター調査を実施した貞兼さんからはメイル5)の依頼がありましたので、リジャンさんが取得した容量の大きいデータを関係者に送りました。

5)さだかね あやこ 2015/05/28
伏見さま
ありがとうございます。良い交流の場になればと思います。
また、リジャンさんの映像をできれば、当方あるいはランタンプラン事務局宛送っていただければ幸いです。新しいランタン村の選定に重要な示唆を与えるものになるはずです。
よろしくお願いいたします。
伏見さんのネパール情報もいただいています!

八木グループは5月29日にカトマンズ入りし、早速電話で話しましたが、メイル6)で情報交換の打ち合わせ場所と時間を知らせてきましたので、とりあえずメイル7)で返信しました。

6)八木浩司 2015/05/30
伏見先生
八木です
昨日は大変失礼しました.
明日の件ですが,ヒマラヤホテル集合で,そのままロビーで打ち合わせでないでしょうか?
DWIDPが10時から開くので場所の確保が難しいからです.われわれは先生方との打ち合わせのあと,DWIDPに参って市内の調査に参る予定です.
宜しくお願いします.

7)伏見 碩二 2015/05/30
八木さまーーー伏見です。
明日の打ち合わせの件、了解しました。
私たちは午前8時55分に行きますので、
ヒマラヤホテルのロビーで話しましょう。
桧垣さんたちにもよろしくお伝え下さい。
PS
「先生」呼ばわりはやめてくれませんか。
お互いに「さん」付でいきましょう、ネ。

  5月27日から3日間のメイルのやり取りで5月31日の事前の情報交換会が実現し、そこには、八木さんの他に、桧垣さんと若井さん、そして八木グループの共同研究者である灌漑省のシャンムケシュ・アマティヤさん、貞兼グループの貞兼さんと中原さん、そしてリジャンさんに僕が参加し(写真5)、ホテルヒマラヤの芝生の庭で、照りつける亜熱帯の強い日射をものともせず(写真6)、1時間半話し合いました。  なお、翌日の八木グループのヘリコプター調査も好天気のもとに実施し(写真7、8)、貴重なデータが得られたとのことです。

  最後になりますが、7月18日には雪氷学会の緊急公開シンポジウム「ネパール地震と雪氷災害―現状把握と復興にむけて―」(資料参照)が行われる予定ですので、その際、ふたたび情報交換ができれば良い、と考えているところです。

資料
緊急公開シンポジウム「ネパール地震と雪氷災害―現状把握と復興にむけて―」(案)
今回は,谷底にあった村が全滅するという,ネパール全体のなかでも最も大きな被害を受けたランタン谷に着目し,実際に現地支援を行っているNGO団体ランタンプランからの報告を受けて,現地で本当に必要とされている支援のありかた,そして,この特異な被災状況の真相を探る学術的な調査の実施について議論したい.そのため,ランタンプランと,現地調査を計画中の科研費突発災害調査チームとの共催とする.
【開催要領】
・主催:公益社団法人日本雪氷学会
・共催:NGOランタンプラン,科研費突発災害調査チーム
・場所:法政大学市ヶ谷キャンパス
・日時:7月18日(土)1300~1700