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ネパール2015年春調査18北海道大学山岳館講演会の要旨

 

20150906北大山岳館講演会
”ネパール報告-「2015年ネパール地震」を中心に-” 
伏見碩二
1)はじめに

  2015年2月24日~6月9日の「ネパール2015年春」計画の主な内容は、1)カトマンズ大学の講義と2)ポカラ国際山岳博物館の展示更新だったが、滞在期間中に開かれた国際氷河学会とネパール地質学会のカトマンズ会議に参加するとともに講義を行っていたところ、4月25日に「2015年ネパール地震」が発生した。そのため、大学が休校になったので、地震関連の現地調査も行い、予定通り、6月10日に帰国した。

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写真1 カトマンズ旧王宮の地震前(下)と地震後(上)

 

 

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写真2 岩屑雪崩で埋まったランタン村とランタンコーラ

2)住民の自然認識に関する3つの疑問

A)3~4月のカトマンズ雷雨・ランタン降雪の異常気象について
3月後半から4月にかけてカトマンズでは雷雨が続き、カトマンズ盆地のように砂や粘土の湖成堆積物で覆われているところやネパール山間部のように断層活動でできた粘土層地帯では土壌水分量が大きくなり、地表が地震被害を大きくする軟弱地盤化に気づいていたか?また、ランタン地域では毎日降雪があり、放牧中のヤクがかなり死ぬ中で、「2015年ネパール地震」が発生、雪崩がランタン村を襲い、174名が犠牲になった。住民は異常気象には気づいていたが、雪崩発生の可能性をどの程度認識していたのか?
B1934年と1833年の地震被害について
「2015年ネパール地震」の81年前の1934年に起こった地震はよく語られるが、さらに101年前の1833年の地震はほとんど知られていない。前者の震源地は東ネパール、後者のそれは中央ネパールである。震源の遠い1934年地震でも被害が出たカトマンズは、震源の近い1833年の被害はさらに大きかっただろう。地震は80年~100年毎に現れると言われているように、これらの地震被害の教訓がなぜ生かされなかったのか?
C)震度5程度で大災害になったことについて
4月25日に発生した地震の震度は、1995年の神戸・淡路大震災時の大津で感じた5程度で、日本でならあまり被害が出ないと思われたが、ネパールでは死者8千、倒壊家屋50万戸以上などの大被害が発生した。カトマンズ盆地内のみならず広域的な視点から、トリスリバザール周辺のヌワコット地域やカトマンズ~ポカラ間のバス・ルート沿いの被害状況を現地調査し、なぜ震度5程度で大災害になったのか?、を調査した。
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写真3 ネパールの1833/1934/2015年の震源地分布

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写真4  ヌワコット地域リク川周辺の破壊された民家

3)JICAの地震セミナー

 「2015年ネパール地震」発生から1ヶ月目の5月25日に、JICA主催の地震セミナー「Build Back Better Reconstruction Seminar for  Nepal」が 開かれた。タイムリーな企画で、聴衆は4百名ほどに達した。セミナーの主な趣旨は地震後のネパールのより良い復興に向けて情報交換を行うことだったのだが、報告内容を聞いてみると、日本の地震災害の実態や経験、さらに耐震家屋の実験的研究などが中心で、土台の軟弱地盤に関する発表はなかった。これでは、砂上の楼閣をつくるようなもので、はたして、ネパールの地震災害の具体的課題にどの程度役立ったのかどうか疑問であった。
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写真5  JICAにより開催された地震セミナー

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写真6 パタンの無事の寺(AとB)と破壊された寺(C)

4)現地で共に学ぶ

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写真7 スワヤンブナート寺院の破壊した仏塔

では、地震災害の具体的な課題解決とは何か?パタンでは、世界遺産の建造物が集中する地域で、破壊された建物と被害を受けなかったものとが共存している。またバクタプールでも、世界遺産のストゥーパは破壊されたが、周辺の二重の塔やニャタポラ寺院の五重の塔は無事であった。2)のC)と3)で指摘したように、現地に即した課題解決の重要な視点として、地震で破壊された建物と被害がないか、少なかった建物の違いを現地調査で明らかにし、民家や貴重な文化財の保護・保全策を明らかにすることが重要である。さらに、住民の災害意識の向上のためには、2)で述べたように、住民と研究者が協力し、カトマンズに地震博物館、ランタン村にヒマラヤ災害情報センターを設立し、現地で共に学ぶ必要がある、と考える。

5)参考資料

1)時系列ブログ<http://hyougaosasoi.blogspot.jp>
2)テーマ別ウェブサイト<http://glacierworld.weebly.com>
3)ヒマラヤなどの写真データベース(11万点以上)<http://picasaweb.google.com/fushimih5>
4)カトマンズ大学の講義<http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/>