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2017年ネパール通信12

バルンGLOFについての緊急報告3 疑問の解消に向けて

矢吹さんから5月15日に送られてきた写真1と2の画像で洪水の発生地域が、またアメリカにいるリジャンさんとのメイルで発生日が明らかになるとともに、これまでの「バルンGLOFについての緊急報告と2」*で疑問になっていたその他の疑問の解消に向けて報告します。
* 2017年ネパール通信8
バルンGLOFについての緊急報告
https://glacierworld.net/travel/nepal-travel/2017-2/barung-glacier/
2017年ネパール通信11
バルンGLOFについての緊急報告2
https://glacierworld.net/travel/nepal-travel/2017-2/barun-report2

写真1 矢吹さんから5月15日に送られてきた2017年4月18日のSentinel2画像(上の黄色い破線内の2地域は写真6の2地域と同一です)。

発生地域について

矢吹さんから送られてきた2017年4月18日のSentinel2画像(写真1)と2017年5月8日の画像(写真2)の黄色の点線内を比較すると、谷中のデブリ(岩屑)部分の広がりが2017年5月8日の画像で顕著になっているので、両者の画像の撮影日の間に洪水流が発生したことを示す、と考えられます。従って発生地点は、バルンGLOFについての緊急報告2の写真3で矢吹さんが「Lower Barun氷河湖の下流側の北側の氷河の隣に見えている氷河湖がかなり怪しいです」と報告した地域です。洪水によるデブリ(岩屑)の地形的特徴がどこからの出水によって形成されたのかを明らかにするために雲のないクリアーな画像が望まれます。

写真2 矢吹さんから5月15日に送られてきた2017年5月8日のSentinel2画像(上の黄色い破線内の2地域は写真6の2地域と同一です)。

発生日について

 写真1と2の撮影日である2017年4月18日と2017年5月8日の間に、洪水流が発生したので、バルンGLOFについての緊急報告2で指摘したように、リジャンさんがアメリカ出張する前に、今回の災害は4月19日に起こったと言っていましたが、福井さんは4月20日に発生したと報告しています。そこで、災害発生日は重要な基本情報ですので、矢吹さんの今朝の写真情報を伝えるとともに、リジャンさんに災害発生日を下記のメイルで再び聞くことにしました。
FUSHIMI HIROJI

2017/05/15, 11:12

Rijan Sama,

Today, Yabuki San sent me the very important satellite images;Sentinel2_20170418 and Sentinel2_20170508 attached, showing the clear change of No.2 area in the east of the Lower Barun Glacier, therefore it is obvious that a kind of flood occurred on the date between 18 April and 8 May in the No.2 area. Is it on 19 or 20 April as I asked you in the previous mail?
“Good Luck and Enjoy Your Wonderful Life in Colorado” from Hiroji Fushimi.
Cc. Yabuki Sama

 すると、5時間ほどしたら、コロラドのリジャンさんから次のような返事がきて、洪水の発生日はネパールの新聞情報で4月20日であること、また矢吹さんの画像情報が洪水の発生地域を最終的に判断するのに役立つでしょう、と知らせてきました。リジャンさんの素早い対応には、ネパールでも発展しつつあるネット環境の素晴らしさを感じました。

Dr. Rijan Bhakta Kayastha
2017/05/15, 16:07
Dear Fushimi sensei,
According to Nepali Newspaper (Annapurna Post) the flood occurred on Thursday, 20 April 2017 in Barun Area.
I hope new images from Yabuki-san will help to finalize the source area of that flash flood.
Regards,
Cc. Yabuki Sama

洪水の発生日については、リジャンさんの思い込みを信じて4月19日と思っていましたが、 「2017年ネパール通信8」*で紹介したネパールの新聞2紙でも(ネパール語の新聞は学生が訳してくれました)、4月20日と伝えていますので、リジャンさんのメイルのように、ネパール語の新聞 ”Nepali Newspaper (Annapurna Post)”の情報で良かったことになります。
* 2017年ネパール通信8
バルンGLOFについての緊急報告
https://glacierworld.net/travel/nepal-travel/2017-2/barung-glacier/

写真3 矢吹さんから送られてきていた2017年4月20日のLandsat画像

2017年ネパール通信8「バルンGLOFについての緊急報告」で、「4月19日というGLOF発生日にも(4月20日以後かもという)疑問が出てくるのである」との問題点をだていしましたが、写真3の2017年4月20日のLandsat画像には、雲が多く不鮮明な部分もありますが、Lower Barun氷河の東側の地域には、写真2で観察されるような洪水による岩屑部分の広がる地形的特徴は見られていないようです。災害発生日4月20日のLandsat画像ですが、災害発生の直前に撮影された可能性があるのでしょうか。

写真4 画像取得日が(2015/5/13)を示すグーグル・アース画像と2017年5月8日のSentinel2画像の矢吹さんによる合成画像。写真6の1地域内に分布する岩石氷河が左側に見える。

その他の疑問点について

写真4は、矢吹さんが整備した画像ですが、グーグル・アース画像の画像取得日が(2015/5/13)になっていますので、当初2年ほど前の画像情報かと疑問に思っていました。従って、洪水発生を示す岩屑部分の広がる地形の形成はグーグル・アース画像の画像取得日以前になると解釈しましたが、実際のグーグル・アース画像には洪水発生を示す岩屑部分の広がる地形はありませんので、矢吹さんが整備した画像は、2015年5月13日のグーグルアースの画像と2017年5月8日のSentinel2画像を合成したものと解釈できました。ついては、疑問に思った点は当てはまりませんので、上記の疑問は氷解しました。

写真5 黄色の破線内こ見られる白色の流水跡のようなパターンから、バルン氷河からFlash Floodが発生した、とこのSAR画像から当初は考えた

さて、最後には写真5のSAR画像に見られるバルン氷河下流部の末端モレーンから続く白色の流水跡と解釈した特徴的な流紋状のパターン(写真5の黄色点線内の1の地域)から、今回の災害はGLOFではなく、バルン氷河上の池などの水が越流してきた、いわば鉄砲水のような洪水現象(flash flood)であると報告しましたが、写真6でも明らかなように、黄色点線内の1の地域には洪水現象を示す地形的特徴は認められません。しかも、SAR画像に見られる同様な白い流紋状のパターンは画像の上部右側とともに1の地域からさらに南西方向にも顕著に現れています。はたして、SAR画像に現れる写真1の「白色の流水跡と解釈した特徴的な流紋状のパターン」に見える部分は何を示しているのでしょうか。そこで、矢吹さんに聞きますと、「その画像にだけ見えていて、次の画像には出ていませんのでよくわかりません。単に衛星軌道に対してその地表の模様が特異的に見えただけかもしれません」とのことでした。
結果論になりますが、写真5の黄色の破線で囲んだ2の地域に洪水跡を示す特徴的なパターンが現れていれば、SAR画像は洪水発生地域の解釈に寄与すると思われますが、「2017年ネパール通信8、バルンGLOFについての緊急報告」では、SAR画像の「白色の流水跡と解釈した特徴的な流紋状のパターン」が1の地域の現れているため惑わされてしまいました。今回の経験から、SAR画像の利用とその解釈にあたっては留意すべき点だと思われます。

写真6  矢吹さんから送られたSentinel2画像を改変する。当初判断した1地域ではなく、2地域に洪水が起こったと解釈した。1地域内には白い破線で示す岩石氷河が谷中まで張り出しており、ホング川流域で見た右下写真のような大規模な岩石氷河と思われる(写真4参照)。

写真6の2地域内の矢印が示すように(写真2と同様)、洪水による出水が形成したデブリ(岩屑)の地形的特徴が認められるので、その出水がどこから来たのかを明らかにするためにも、雲のないクリアーな画像が必要になる。