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(1)はじめに

ヒマラヤの自然史  “ヒマ・アラーヤ・バーワン”。これは私たちがカトマンズで借りていたヒマラヤ地域の研究者のための家の名であった。サンスクリット語ではヒマとは雪、アラーヤとは住居のことで、ヒマラヤとはこの二語が結合した言

(2) 新生代後期の地球

  地球の海と陸の歴史を見ると中生代(2億3000万年~7000万年前)にほぼ赤道沿いに地球をとり巻くように分布していたテーチス海(古地中海)が新生代後期(約1500万年前)に始まったヒマラヤ地域などの上昇によって陸化し

(3)自然史とその地域性

  ヒマラヤ山脈をはじめ内陸アジアの高山地域では広域的に見ても、また局所的に見ても、場所ごとに地形条件や気候条件が異なっている。このことは植生や人間をも含めた生物などの分布に影響を与える。ヒマラヤ山脈は陸続きの土地ではあ

(4)これまでのヒマラヤの概念

4.これまでのヒマラヤの概念  われわれが心にいだいているヒマラヤの概念、あるいはヒマラヤ観とはいったい何であろうか。   ネパールの丘陵地に住む人たちはヒマラヤの山々を一般にヒマールと呼んでいる。インドのウッタル・プラ

(5)ヒマラヤの上昇

1934年、ネパールを中心としたヒマラヤ地域は大きな地震にみまわれた。この時、カトマンズ市内のレンガ造りの家のほとんどが破壊されたといわれる。この地震はヒマラヤ地域を南北に切っているパトナ断層の動きがその原因とされている

(6)上昇速度

水平に堆積したと考えられる第四紀の湖成層が約20度も傾斜した構造を示したり、同じく氷河が作ったモレーンが南北性の断層によって切られていることがネパールで観察されている(文献17)。これらのことは、比較的最近の時代になって

(7)水平方向の変位

ニュー・デリー付近のデリー・ソネパット断層の動きは、4年間に30センチと報告されている(文献23)。すると、この断層の南北方向の変位速度は年に7~8センチとなる。 もっと長い時代にわたる水平の動きについては、古地磁気の観

(8) ヒマラヤの地理的概念

   ヒマラヤの高地に住む人たちは畑作の上限で生活しており、限界条件での彼らの農業と牧畜とは厳しい自然条件への適応と彼らの創意工夫によっている。クンブ地域のシェルパの人たちのじゃがいも栽培で感心させられるのは、三種類のじ

(9)内陸アジア変動帯

9.内陸アジア変動帯 新生代後期に始まる汎地球的な地殻変動の結果を生じた地形変化と氷河時代に代表される気候変化は現在の地球の姿に大きな影響を与えている。地形変化と気候変化がすべての生物にとっての環境を形成し、生物と環境と

(10)ヒマラヤの範囲

ヒマラヤ地域の東西方向の地理的概念に関して、深田などの山登りに立った考え方は、またガンサー、デュピュイの自然科学の分野からの見方と同様にヒマラヤ地域の定義を広げすぎているようだ。ガンジス河の水源域をヒマラヤとしたバッラー

(11)ヒマラヤの地質

  ヒマラヤ地域で最も古い岩石は古生代以前の先カンブリア紀(5.7億年以前)の変成岩や花こう岩である。ヒマラヤ地域の地質図を見ると、これらの岩石がこの地域の基盤岩となっており、その分布はヒマラヤ山脈、カラコルム山脈、コン

(12)テーチス海堆積物

12.テーチス海堆積物   ヒマラヤ山脈の主稜地帯からチベット高原にかけてはほとんど変成作用を受けない堆積岩が広く分布している。これがヒマラヤ山脈の多くの高峰の頂上にも見られるサンゴや海ユリなどの化石を豊富に含む古生代、

(13)地質構造

   ヒマラヤ地域の上昇のプロセスとその原因を考える上で、まず地質構造を明らかにすることが必要である。なぜならばヒマラヤ地域の上昇を引き起こした強大な圧力と温度の影響は長い時代にわたる上昇のプロセスを通じて、ヒマラヤ地域