チベット紀行 -氷河現象からみたトランス・ヒマラヤからグレート・ヒマラヤの自然-3

 この討論会の中心テーマは,“青蔵高原の上昇と自然環境と人間への影響”となっており,主なテーマは,1)地質,2)地理環境と3)生物であった。この討論会には,中国人研究者約240名,外国人研究者80名ほどが参加し,寄せられた論文数は300編をこえ,発表・討論の場は地質,地球物理,地球化学,層位学,古生物,動物,植物,生理,地形,地理,気象の11分科会であった。
日本からこの討論会に参加したのは,原寛教授(東大),沼田真教授(千葉大),樋口敬二教授(名大),牛木久雄氏(東工大)と私の5人であった。内陸アジアの研究者を多数かかえたソ連などの国々からの参加者がなかったことは,政治情勢とはいえ残念であった。連日朝8時30分から夕方5時30分まで,各分科会ではさまざまな発表・討論がおこなわれ,夜は参加者が撮った映画やスライド会が催された。おかげで,故宮博物院などの北京の名所旧跡は見ずじまいであったが,内陸アジアの自然現象を知ることができた充実した1週間であった。