7.水平方向の変位

Pictureニュー・デリー付近のデリー・ソネパット断層の動きは、4年間に30センチと報告されている(文献23)。すると、この断層の南北方向の変位速度は年に7~8センチとなる。

もっと長い時代にわたる水平の動きについては、古地磁気の観測の結果からインド亜大陸が中生代の白亜紀から7000万年の間に5000キロメートルも北に移動したとされており(文献24)、そうすると水平方向の平均移動速度は年間約7センチとなる。この古地磁気の観測はアジア大陸側の資料が乏しいため、アジア大陸の移動の歴史がよくわかっていない。いずれにしても、インド亜大陸5000キロメートルものかつての海洋底の地殻はどうなったのか、という問題を含んでいる。  またヒマラヤ地域を東西に走っている衝上断層を境にヒマラヤ山脈はインド亜大陸側に相対的に100キロメートルものし上がっている、とも報告されている(文献10)。この衝上断層の動きもまた新生代後期から始まったとすると、その水平方向の平均変位速度は年に約1センチということになる。
現在のところヒマラヤ地域の上昇の歴史とその地域性について量的に示すことはできないが、少なくともヒマラヤ地域が垂直方向にも水平方向にも他の地域に比べてより大きく変位してきたことを示している。