2017年ネパール通信17 余話4 何を食べていたのか-ネパール効果-

2017 17 01
« 14 »

1)はじめに
今年3月初旬からのカトマンズ大学の講義とランタン谷の調査やポカラの国際山岳博物館の展示更新などを終え、6月中旬の帰国早々、三菱京都病院の三木先生のところで血液検査をしたところ、これまで要注意が続き、しかもネパール出発に向かって高まっていた血糖と中性脂肪の値が、正常値の範囲内におさまっていた(写真2)のである*。これは嬉しい変化だが、はたして、どうしてそうなったのか。
*3)食生活と血液検査結果
https://glacierworld.net/travel/nepal-travel/2017-2/topic01/

写真2 調査前の半年間と帰国後の血液検査結果

そこで、三木先生は「ネパール効果ですね」と言われたのである。はたして、ネパール効果とは何か。おそらく、ネパールでの食生活の要因が大きいと思われるので、それを仮説として、2017年の2752枚の写真データベース*の中から食事関係の318画像を選び出し、具体的な食生活をふりかえって、「ネパール効果」と関係すると思われる「何を食べていたのか」を明らかにしたので、報告する。
*2017Nepal
https://glacierworld.net/gallery/Nepal_B/2017Nepal/index.html
補足
食事関係の写真が318枚(1日平均3.6枚)もあるのは、デジカメだからで、昔のようなスライド写真の時代には、もったいなくて写真枚数は制限し、フィールド・ノートにできるだけ記載したのであるが、現在のデジカメ時代にはフィールド・ノート代わりに写真を撮っている感がある。つまり、現代のデジカメ写真はフィールド・ノートの一環なのである。そこで、できるだけ、前述のような写真データ・ベースとして整備し、誰もが利用できるようにしたいと考えている。

写真3 カトマンズ大学食堂の典型的なネパール料理(ダルバート)

2)何を食べていたのか

カンティーンと呼ばれているカトマンズ大学食堂の典型的なネパール料理(写真3)は、ネパール語のダルバートで、ダルは小豆スープ、バートはご飯のことである。バイキング形式なので各自が(1小豆スープと2インド米のような細長いご飯、3野沢菜のような葉物野菜の煮付け、4大豆スープ、5キューリ、6ニンジン、7漬物、8そば粉の薄揚げ物)を食器に取り入れるが、かなりの人が山盛りのご飯を食べている。最近のネパール人男女にはお腹の出た人が多いのもうなずける。2017年春の89日間写真データの中には食事に関する画像(写真4のNo.1-10)が318枚あるので、それらをふりかえりながら、「何を食べていたのか」と「ネパール効果」との関係を考えた。

写真4 写真データ( 2017年春の食事;写真番号と期間)

写真5 2017年春の食事No.1 #001-032 (2017/03/09 at 17:39)-(2017/03/19 at 18:03)

2-1)2017年春の食事(2017/03/09-2017/04/01)

大学で取るダルバートは食事量としては多いので、昼食か夜食の1日1回にしていた(写真5の#019、写真6の#034,035,042)。バイキング形式の食堂風景が写真5の#030-032、写真6の#033に示されている。大学のゲストハウスは電力のみが使用できたので、電気コンロで料理を自炊し(写真5の#010-012、020-027)、朝はスープや味噌汁にビスケット(写真5の#008、014、020、写真6の#037、040、043、047、050)が多く、大学食堂で食事を取らない日の昼食や夜食はネパール製か韓国製のインスタント・ラーメン(写真5の#007、009、015、017、028および写真6の#038、048)を食べていた。ネパールは野菜がふんだんにあるので、大学周辺の野菜屋でトマトやナス、ニンジン、オクラなど(写真5の#023、024)を買い料理するとともに、ビタミンCが豊富そうな小粒のネパール産レモン(カーガティ;写真5の#022)とともに、年中あるバナナ(写真5の#028、029、写真6の#036-041)と3月にはまだ出回っていたミカン(写真5の#029、写真6の#036、037)をよく食べた。また、カトマンズの街では、繁華街ターメルのホテル近くのレストランか旧友のハクパ・ギャルブさんの自宅で食事を取る時は、大学のベジタリアン・断酒生活とは違って、ビールやチャン(獨酒)を飲みながら肉料理を食べた(写真5の#001-006、写真6の#052、053)。さらに、3月下旬から4月初めはカトマンズを離れ、ランタン谷の調査を行ったので、旅行中のアルコールなしの現地食になった(写真6の#054-064)。

写真6 2017年春の食事No.2 #033-064 (2017/03/19 at 18:03)-(2017/04/01 at 07:35)

写真7 2017年春の食事No.3 #065-096 (2017/04/01 at 07:35)-(2017/04/12 at 18:44)

2-2)2017年春の食事 (2017/04/01-2017/04/17)

写真7の#065-075はランタン谷の調査中の現地食であるが、特筆すべきは、現地の灌木の実でつくったしぼりたてジュース(キュルプ;写真7の#069、071)と旅行初日(写真6の#054-056)と最終日(写真7の074、075)のブッダ・ゲスト・ハウスで食べたダルバートとパンケーキは絶品だった。旅行後はカトマンズに2泊し、日本食レストラン桃太郎でビールを飲みながらお決まりのカツ丼(写真7の078、079)をむさぼり食べた。大学に戻ってからは、いつも通りの食堂のダルバート(写真7の#081、082、084、089、095、096と写真8の098、110、120)を1日1回食べたほかは自炊で朝はスープか味噌汁にビスケット(写真7の#085-088と写真8の097、100-108、122-123、125)、昼食か夕食はインスタントラーメン(写真7の#080と写真8の#121、124、126)の定番の食生活を送った。朝食の味噌汁の味噌(写真8の#103-105)は日本食レストラン桃太郎で手に入れた。ネパール製の味噌は、日本人にはイマイチだが、我慢するしかなかった。また、コーヒー(写真8の#128)であるが、来る時にお世話になった昆明の雲南緑華食品有限公司の宮本哲也さんからいただいたもので、大事に飲んで、時折香りを楽しんだ。カトマンズ大学のキャンパスには桑の木が何本かあり、春には実がなるので、学生たちや周辺の子供たちが木に登り、桑の実(写真8の#111-118)の味を楽しんでいるのだった。この期間はパパイア(写真7の#094と写真8の#103、122、123、127)のほかにマンゴーやブドウなどの果物も自炊の食卓を楽しませてくれた。

写真8 2017年春の食事No.4 #097-128 (2017/04/13 at 06:27)-(2017/04/17 at 15:13)

写真8 2017年春の食事No.4 #097-128 (2017/04/13 at 06:27)-(2017/04/17 at 15:13)

2-3)2017年春の食事(2017/04/17-2017/05/12)

カトマンズ大学には韓国や欧米の長期滞在の研究者もいるのだが、彼らは食堂のダルバートは口にあわないようで、食堂のゲスト・テーブルに座るのはぼくとネパール人教官ぐらいであった。日本人にとっては、ダルバートは違和感がなかったが、ネパール人のようにご飯の食べ過ぎだけには注意した(写真9の#130、131、134、135、139、142、145、149、150、153)。写真9の1日1回の食堂のダルバート以外の朝食のビスケットと、昼食か夕食のインスタント・ラーメンの時はできるだけ果物(ブドウやマンゴー 、ミカンやバナナ)を取っていることが、写真9の#132、133、136-138、141、143、144、146-148、151、152、154-160にも現れている。
4月30日から5月7日はポカラに行き、国際山岳博物館で展示更新を行ったので、 その前後はカトマンズに滞在した。ポカラ出発前のカトマンズでは、氷河調査に来ていた名古屋大学の学生、大田さんと行きつけの桃太郎で例のカツ丼(写真10の#163-167) を、またポカラでは長年世話になっているドラゴン・ホテルなどでダルバートやビール付き焼き鳥などを(写真10の#168-179)を食べた。長旅ではあったが、腹具合は快調で、食欲は旺盛であった。ポカラからカトマンズに戻って、ランタン村の雪崩災害の復旧活動に尽力されている貞兼綾子さんたちと、1970年代から付き合いのあるウツセ・ホテルでチベット料理、ギャーコックを楽しみ(写真100の#180-183)、そして5月9日から、カトマンズ大学の食生活に再び戻った(写真10の#184-192)のである。

写真10 2017年春の食事No.6 #161-192 (2017/04/28 at 10:59)-(2017/05/12 at 14;16)

写真11 2017年春の食事No.7 #193-222 (2017/05/12 at 17;57)-(2017/05/20 at 07:33)

2-4)2017年春の食事 (2017/05/12-2017/05/25)

5月中旬から講義最終日の5月末まではカトマンズの街に出ることなく大学でのベジタリアン生活が続き、食堂での毎日1回のダルバート(写真11の#193、199、204、206、211、215、218、219と写真12の#228、231、232、239、240)を食べていたが、この期間は果物が豊富で、パパイア(写真11の#194、195、210と写真12の#247-250)、ザクロ(写真11の#202、203、221、222と写真12の#237、238)、マンゴー(写真11の#212と写真12の#242、243)、バナナ(写真11の#205、208、213、216と写真12の#233、241、253)、ライチ(写真12の#253、254)のほかにもブドウ(写真11の#194、196、198-201、206、209、213、214、216、217と写真12の#234、241、244、245)を贅沢にもたくさん食べていた。また、大学近くのバネパの町にはズズー・トゥー(ラジャー・ダヒ;王様のヨーグルトの意味)と呼ばれる素焼きの壺に入った美味しいヨーグルト(写真12の#223-227、251-253;#252には王様のヨーグルト店の主人が写っている)があり、バナナやザクロなどの果物と一緒に朝食のビスケットや昼食などのデザートとして楽しんだ。

写真12 2017年春の食事No.8 #223-254 (2017/05/20 at 13:05)-(2017/05/25 at 18:04)

写真13 2017年春の食事No.9 #255-286 (2017/05/25 at 18:58)-(2017/05/29 at 08:27)

2-5)2017年春の食事(2017/05/25-2017/06/05)

カトマンズ大学の最終期間に当たる5月末(写真14の#296)までは、定番のダルバート(写真13の#255、256、264-266、270、271と写真14の#295、296)をとるとともに、ゲスト・ハウスの自炊時には、果物として、バナナに王様のヨーグルトを(写真13の#257-262、268、272、273、276-279)まぶしたり、ふんだんにあるマンゴー(写真13の#259-263、277、278と写真14の#287、288、291、292)に出はじめたライチ(写真13の#284-286と写真14の#289、290)を、残しておいた最後のコーヒーの香りとともに楽しんだ。
5月31日に大学からカトマンズに移った夜は、長年ネパールで観光業やホテル経営をしてきている宮原巍さん宅の夕食会があり、美味しい和食料理に加えて、大学からカトマンズに来る途中にかってきたバクタプールの別の王様ヨーグルトのデザート(写真14の#297-299)も美味しくいただいた。6月6日のカトマンズ出発までは、1970年代の氷河調査時代から世話になっているハクパ・ギャルブさんの邸宅で晩酌付きの食事(写真14の#300-303、306-309、311-317)とともに、カトマンズに滞在し長年観光業を営んでいる大河原夫妻のレストラン、ラム・ドゥードルで(写真14の#310)ご馳走をしていただいた。そしてネパール最後の夕食は、カトマンズの和食店桃太郎で、写真データベースを整備してもらっている干場さんにパソコンの点検をお願いしながら、いつものように二人でカツ丼を食べ(写真14の#318)、帰国後の再会*までの、お互いの旅の安寧を祈念したのであった。
*2017年ネパール通信15 余話2
ネパール写真の整備と公開

2017年ネパール通信15 余話2を追加しました。

写真14 2017年春の食事No.10 #287-318 (2017/05/29 at 13:29)-(2017/06/05 at 18:22)

3)まとめ

幸いなことに、久しぶりの氷河調査を行ったランタン谷の踏査中は体の調子は快調で、とどこおりなく現地調査を終了することができた。その第1の要因は、「心臓を手術していただき、4163mまで登ることができるように回復してくださった三菱京都病院名誉院長の三木真司先生」*で、先生には重ねて感謝するとともに、第2の要因としては、「まとめ」として以下に述べるような「何を食べていたのか-ネパール効果-」などが影響しているのではなかろうか。
*2017年ネパール通信4
「ランタン村周辺調査の予察的速報」
https://glacierworld.net/travel/nepal-travel/2017-2/2017-4/
さて、今回の「2017年ネパール通信17 余話4 何を食べていたのか-ネパール効果?-」のまとめであるが、2017年3月9日から6月5日までのネパール滞在89日間で、カトマンズ大学の滞在期間が50日、また大学生活同様に酒をひかえていたランタン谷の調査期間が11日なので、ダルバート中心のベジタリアン的なアルコールなしの食生活の期間が合計61日になり、全体の69%をも占めている影響が、冒頭の「1)はじめに」で述べた血液検査の結果、血糖値や中性脂肪値の低下となって現れたと考えても不思議はない、であろう。ただし、カトマンズ20日間とポカラ8日間の合計28日(全体の31%)の期間には晩酌と肉料理などの日本的な食生活であったが、幸い、全体的な割合が少なかったために、ベジタリアン的食生活で現れた血液検査の良好な結果を打ち消すような要素にはならなかったようだ。カトマンズ大学の50日間には毎日のようにバナナやブドウ、パパイア、マンゴー、ザクロ、ライチ、そしてビタミンCの多そうなネパールのレモンの果物にくわえて、滞在期間後半には王様のヨーグルトを果物にまぶして食べたのも体調管理・維持に役立ち、「ネパール効果」となって現れた、と解釈している。以上のような食生活と直接関係する「ネパール効果」にくわえて、さらに、4000mを超える高所まで体を使ったランタン谷の調査活動やカトマンズ大学では昇り降りのある丘の上の快適なキャンパス環境があり、ストレスの少ない学園生活を送ることができたことも、肉体的・精神的な方面からの影響として、総合的な体質改善効果に結びつき、結果として、血液環境の改善に結びついたものと思われるのだが、はたしてどうだろうか。
だが、しかし、である。この日本にいると、ついつい不健康な食生活になりがちなので、できるだけ「ネパール効果」が持続するように、せっかく獲得した良好な血液環境を何とか保っていきたいものだ。