ネパール2014春調査報告9 IMM(国際山岳博物館)展示更新
アンデスの山岳民族の展示も
さて、国際山岳博物館の展示更新(写真4)ですが、新しい展示がくわわりました。それは、前便でお伝えしたICIMODの会議(資料1)の参加者を通じて、アメリカ人の文化人類学者Dr. Johan Reinhardから次のようなメイルが来たことがきっかけでした。
While in the museum a few months ago, I noticed that the Andes range, which is the world’s longest mountain chain and has the highest mountains outside of Asia, was not represented. I have traveled throughout much of the Andes for over 30 years (and have climbed over a hundred peaks), and thus I have several thousand images that I would be happy to make available to the museum. Since I am an anthropologist, there are also many images of local inhabitants and their cultures.
(意訳:数ヶ月前に博物館に行きましたが、アジア以外で最長の山脈で、高山でもあるアンデスの展示がないことに気づきました。私は30年以上アンデスを旅行し(100以上の山頂に登り)、数千枚の写真がありますので、博物館で使ってもらえれば幸いです。私は文化人類学者ですので、住民や文化についてのたくさんの写真があります。)
そこで、「国際」と銘うっている山岳博物館としてはアンデス山脈を無視することはできませんので、Johan Reinhardさんの写真データベースの中からとりあえず10枚を選び、アンデスの展示を加えることにしました(写真5左)。
主な内容は、アンデスのインカの山岳民族は氷河の聖地への巡礼をするとともに、死後は高山の頂上付近に運ばれ、高山の低温条件下でミイラ化している実態をDr. Johan Reinhardが調査していることです。ヒマラヤとは大きく違う山岳民族の信仰と山地の環境とのかかわり方に見学者が関心をよせていました(写真6)。たしか、これらのいくつかの写真はナショナル・ジオグラフィック・マガジンで見たような記憶があります。
ただ、温暖化が進むとすると、融解・再凍結の上限高度が上昇し、従来の寒冷な高山環境が変化しますので、微生物などの高地への移動とともに、アンデス高地の貴重なミイラなどの遺体の分解が進み、保存状態が悪くなることが予想されます。このことは、1920年代のエベレスト隊で亡くなったマロリー氏やヒマラヤの他の遭難者の遺体の保存状況も今後は変化していく(資料2)ことを示しています。
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2014/05/2014.html
http://glacierworld.weebly.com/201424180261491249312497125401252335519266198.html
資料2
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html
ナムチェ・バザールの1970年から現在への変化
従来のほとんどの伝統的な家は新築し、3~4階建てのホテルとなりましたので、あたかもカトマンズの繁華街、ターメルのようなたたずまいになっている(写真5右)ことに、見学者たちも驚いていました(写真7)。しかし、ここにも問題があります。それはトイレで、たれ流しのため汚水が地下に浸透し、やがては町の下部にある飲料水源の湧水の汚染をひきおこすことが心配されます(資料3)。
資料3
http://glacierworld.weebly.com/4imja-glacier-lake.html
更新した従来の展示
今回印刷をし直し、色落ちを防ぐとともに、手などでふれても(写真8)、画像に傷がつきにくいラミネートで加工した展示ポスターの内容は下記の通りです。
温暖化とGLOF
温暖化とGLOF(氷河湖決壊洪水)
なぜ、ネパールの大規模氷河湖は決壊しないのか
マディ川氷河湖洪水
2012年セティ川洪水
マチャプチャリ研究
大気汚染と視程(Air Pollution and Visibility)
雪型(Snow Shape)
雲の形成(Cloud Formation)
エコツアー
ポカラのグランドキャニオン(Grand Canyon of Pokhara)
ダンプス(Dhampus)
ツラギ氷河湖(Tulagi Glacier Lake)
イムジャ氷河湖(Imja Glacier Lake)
ギャジョ氷河(Gyajo Glacier)
アンナプルナ・ベース・キャンプ(Annapurna Base Camp)
プーン・ヒル(Poon Hill)
グーグル衛星画像解析
カトマンズの住宅開発と地滑り(Housing Site and Landslide in Kathmandu)
世界のトップ(Top of the World)
最後に
資料4
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2014/05/2014.html