2016年ネパール通信13 カトマンズに戻りました
(1)ネパールの空から(11月22日)
11月22日午後2時、カトマンズに戻りました。今日は天気に恵まれ、ヒマラヤがよく見えました(写真1)。
東ネパールのクンブ地域の世界最高峰周辺の山々を眺めながら、1970年代に長期滞在しながら氷河調査をしたことを思い出しました。
写真は、世界最高のチョモランマ(エベレスト)周辺のヒマラヤの8000m峰です。チョモランマの東のローツェ峰からは雪煙が舞い、風の強いことを示しています。
ネパールの空からは、ヒマラヤの氷河が著しく融解していることは分かりませんが、飛行機から眺める世界一の山々のつながりが、第3の極地としてのヒマラヤがもっている自然の厳しさを充分に感じることができました。
(2)カトマンズにて
1) カトマンズに到着して(11月22日)
カトマンズの街は相変わらずの交通渋滞・大気汚染(写真2)で住民の健康被害が心配されます。
空港近くのリングロード沿いの大気汚染のなかで、ヒマラヤ桜が咲いていました(写真3)が、写真下の三人乗りのバイクに載っている子供も大人も苦しそうな顔つきをしていました。11月のヒマラヤ桜は、ポストモンスーンの快晴の中で、白銀のヒマラヤ山脈を背景にすると、このうえなく映えるのですが。
カトマンズでは、1970年代からの友人であるハクパ・ギャルブさんの新築家庭にご厄介になることになりました。夕食は、ヒエを発行させたトンパとよばれる熱燗で体をあたため、ギョウザのご馳走でした。
2)復興局やトリブバン大学めぐりなど(11月23日)
昨年からお世話になっている地震災害復興局のビシュマ・ブッサルさん(写真5)に会いにネパール政府官庁街のシンガダルバールに行くと警戒態勢が厳しく、パスポートの検査をされるほどでした。
ブッサルさんからは、ヒマラヤ地震博物館に関係するネパール・テレコム(通信会社)が計画している地下博物館や倒壊したダラ・ハラ(ビムセン)塔の保存に対する考え方などについて話を聞くことができました。
次に、 ヒマラヤ地震博物館の発表するように勧めてくれたタラ・バッタライ教授(写真6)に会うために、トリブバン大学トリチャンドラ分校の地質学教室に向かうため、タクシーに乗ったのですが、交通渋滞で車が動かないので、炎天下を1時間ほど歩きました。
バッタライ 教授の部屋にはネパール地質会議の関係者が集まって、会議のプログラムの話をヅルとのことでした。会議開催4日前でもプログラムができていないとは、たいした”のんびりムード”だな、と思いました。
地震で破壊された建物の復旧が進まない通りをひっきりなしに車が通っています(写真7)。カトマンズの交通渋滞は悪くなる一方で、歩くほうが速いくらいです。インドの国境閉鎖がとけて、石油が入りますので、1リットル97ルピー(約100円)ですが、車利用が増大してます。従って、大気汚染がすすみ、カトマンズからはヒマラヤが見えないので、上空からヒマラヤを見るためのマウンテンフライトが盛況するのでしょう。
ダルバール広場の破壊された寺院の上を飛ぶハトの群れ(写真9)が、歴史的建造物の将来への希望を示しているように感じられました。
街からハクパさんの家がある郊外までは排気を出さない電池式乗り合いタクシーを利用しましたが、外の道路も車でいっぱい、中も人でいっぱいでした(写真10)。ちなみに、運賃は20ルピーですの、タクシー代金の20分の1ほどです。
カトマンズでは、寒い季節とは言えいろいろの花が咲いています。ネパール政府のあるシンガダルバールの官庁街には、数メールもの高さのあるポインセチアの赤とアサガオの紫の花が日中の日差しに輝いていました(写真11)。
3)カトマンズ大学再訪など(11月24日)
2017年3月から6月までの講義「」の準備のために、早朝の大学のバスに乗り、カトマンズ大学を再訪しました。
カトマンズの街の中はどこでも交通渋滞(写真12)です。歩いたほうが速いくらいですので、やがて、車は役に立たなくなるかも知れません。
ネパールの大気汚染(写真13)の国内原因は、まず第1に自動車の排気ですが、それに、カトマンズ盆地のレンガ工場や野火・森林火災などの煙に加え、インドやバングラデッシュから大気循環で越境してくる汚染物質です。大気汚染は年々ひどくなっており、あたかも高度成長期の日本の川崎や四日市で公害を発生させた状況なのではないか、と危惧しています。
2015年ネパール地震発生から1年半ほどになりますが、 カトマンズ・バクタプール間の地震で壊れたハイウエイの歩道橋はそのまま(写真14)で、地震災害の復旧が進まない状況の象徴のような感じです。
バクタプールにもたくさんのレンガ工場(写真15)があり、大気汚染の原因になっています。 ネパールの建築では大量のレンガを使いますので、レンガ工場は必要悪になっています。赤いレンガの壁が悪霊の侵入を防ぐから、だそうですが、脱煙装置の開発が待たれます。
カトマンズ盆地の東端のサンガ峠から振り返ると、盆地全体が大気汚染で埋め尽くされているのが一目瞭然です(写真16)。このように汚染された大気の中で人々が生活していることを考えると恐ろしい感じがします。
整備の悪い車多いので、白煙をもうもうと出し続ける車(写真17)をよく見ます。ネパールの車検制度にはまだまだ課題が多いことを示しています。
カトマンズ大学のキャンパスからカトマンズ盆地を眺める(写真18)と、写真中央奥のカトマンズ盆地を埋め尽くす大気汚染がカトマンズ大学のあるバネパ周辺に流れ込んでくる様子が分かります。
カトマンズ大学は丘の上にありますので、峠の風が吹いて、比較的空気はきれいです。大学のヒマラヤ桜が満開でした(写真19)ので、学生たちに桜のネパール語を聞いたら、チェリー・ブロッサムの英語は知っていましたが、ネパール語は知らない、とのことでした。
リジャン・カヤスタさん(中央)の研究室のスタッフ(写真20)です。研究室の助手はラケッシュ・カヤスタさん(右)とテンジン・シェルパさん(左)の二人です。これまでいた二人の助手はノルウエイと日本にドクターの研究で留学中で、研究室は若返っています。
研究室には15名ほどの修士課程の学生たち(写真21)がいて、ヒマラヤ山脈の氷河地域の現地調査を行っています。インドやパキスタンからの留学生もいますので、リジャンさんの研究室はヒマラヤの氷河研究のセンターのひとつになっています。
カトマンズ大学からの帰りにパタンの印刷所(写真22)に行き、樋口敬二先生の卒寿記念文集の印刷情報を収集しました。日本雪氷学会の雑誌「雪氷」を見本にして、全ページカラーのため上質紙使用、例えばB5版130ページ、100部印刷で、税金込の値段が14万円程度ですので、日本への輸送代を考えてもかなり安く本ができることが分かりました。
今後の予定
11月27日から30日までカトマンズで開かれるネパール地質会議で「ヒマラヤ地震博物館」*を発表します。
*ヒマラヤ地震博物館(Himalayan Earthquake Museum)の計画
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2016/06/himalayan-earthquake-museum.html